今回はこの極東1ヘクタール法とはどういうものなのかについて書きたいと思います。ウラジオストクは自由港制度に該当しています。これは極東のハブとして物流をスムーズにし、また輸入代替政策でロシア経済を構造転換させようという政府の意向によるものです。この自由港と並行して実地されているのが「極東1ヘクタール法」です。
極東1ヘクタール法とは
極東1ヘクタール法は Far Hectare や Far Eastern Hectare と呼ばれたりします。ロシア国民に1ヘクタールの土地を無償提供するという大盤振る舞いな政策です。2016年5月に施行されて始まった極東1ヘクタール法では、2017年2月までは極東の居住するロシア国民限定で申請可能でした。2月以降はロシア国民すべてに対象が広がり、誰でも極東の土地を手に入れることができるようになりました。広大な領土を持っているロシアに適した政策です。
極東の土地を手に入れる条件
ではロシア国民は無条件に土地を手に入れることができるかというと、もちろんそんなことはありません。どのような形であっても土地を利用しなければいけません。これは当然の事でもあります。ですから安易に「所有地を増やしたい」というだけでは不十分で、土地開墾の意志を持たなければ意味のないものとなってしまいます。
1ヘクタールもの土地をロシア人自身の財産とするための条件は、その土地で農業をしたり、商店を開いたり、工場やホテルを建てたりと、何かしら利用すればいいということになっています。そしてその開墾・利用5年後にはじめてロシア国民自身の所有物になります。したがって5年間は利用実態を証明するテスト期間であり、ロシア人は国から土地を借りているに等しいと言えます。
申請状況と支援策
とても魅力的で野心的な極東1ヘクタール法の申請状況はどうなのでしょうか。どうやら2017年2月までは極東国民に限っていたため期待はずれのように言われることもありましたが、ロシア国民すべてに開放されてからはバーゲンに殺到するかのように多くの申請があるようです。2月1日の初日だけでバーゲンハンターの数は1万人を超えています。2月から急増したのはインターネット上で極東1ヘクタール法申請ができるようになったことも一因です。申請先で人気なのはウラジオストクのある沿海地方のようです。沿海地方の住民が土地申請を行っているのを上回る規模で沿海地方への申込があるようです。ハバロフスク地方なども人気があるようです。
極東1ヘクタール法はロシア国民に極東での経済活動を促す目的を持っています。同法を推進するのにはまだ創設されて新しい極東発展省の働きが貢献しています。実際に土地利用の段階においても、ロシア政府からイチゴ栽培の支援を受けたり、VTBバンクのような大手銀行による優遇金利での融資も背中を押しています。
極東移住推奨政策は歴史上に存在
ロシアという広大な領土国家では19世紀後半にも同様の土地無償提供で移住を進める政策がありました。当時は農地としての提供であり、その規模も100ヘクタールというとてつもない広さを提供しました。歴史上の政策をロシア政府が再現しているという訳です。
土地利用が新たな都市・集落を作り経済を活性化させるには中長期的な期間がかかるでしょう。とはいうものの直接的に極東へ人口移動が起こる可能性があるので、彼らが極東で生活すれば極東にお金が落ちることになります。これは周り巡って極東住民の所得上昇につながるでしょう。落ちたお金が観光資源に向かえばロシア極東観光が盛り上がるエンジンにもなりえます。大いに期待したいところです。