ウラジオストクでは自由港制度の一貫として、事前のビザ取得なしに現地でロシアビザを取得できるビザ制度の緩和が検討されてきました。ロシア・ウラジオストクとの日本とのつながりが密接になる上で、ビザ制度は大きな障害です。待ちに待った簡易ビザ制度の現状について報告します。
→ウラジオストク自由港制度について
→ロシアの E-visa(簡易電子ビザ)について
ウラジオストクにおけるロシアビザ緩和の構想~実現について
日本とロシアが身近でない要因の一つがビザ制度
そもそもロシアへ旅行あるいは渡航される場合に日本人はビザ取得が必須です。日本のパスポートは世界でもトップクラスだと言われます。なぜならこのパスポートで多くの国へビザなしで旅行できるからです。国によってはその国のパスポートでは限られた外国へしか旅行できない場合もあるのです。
その日本のパスポートをもってしてもロシアへ旅行しようと思えばビザ取得が必要なのが現状です。ビザ制度の存在は旅行のハードルを大きく上げます。日本とロシアがそれほど身近でないのはこのビザ制度が障害となっている要因の一つでしょう。
ビザ緩和までの道のり
このような現状の中、ロシアビザが簡素化される話が2年ほど前から浮上しました。これがウラジオストク自由港制度とともに検討されてきた簡易ビザ制度です。基本的に、ウラジオストクを経由するとロシアの各都市・地域を自由に旅行できるようになります。(8月8日に始まった内容から、沿海地方のみ移動可能となっているようです)
ウラジオストクでのビザ緩和は当初、2016年はじめから導入される、と言われていました。ですが実際には半年間延長されました。訪れた半年後の2016年夏にはさらに延長され、2017年度中ということになっていました。延長に延長を重ねた結果、ついに今年2017年2月22日に法案が採択されたようです。どうやら簡易ビザ制度が導入されるまでにはまだ上院を通過し、プーチン大統領のサインが必要なようです。時間はかかりますが問題なく採択される見通しです。
NHK WORLDによると簡易ビザ制度が実務的に利用できるようになるのは今年(2017年)の夏頃のようです。9月には第3回東方経済フォーラムがウラジオストク・ルースキー島の極東連邦大学で開かれます。その東方経済フォーラムに合わせて導入されるようです。※
追記
※簡易ビザ制度は7月試験導入→8月ごろより本格運用が有力なようです。(2017-03-05)
※事前申請のためのサイトをロシア外務省が用意しています(こちら)。ですが8月1日現在、クリックしてもすべて同じ画面で、申込できないようです。サイト内には8月8日からスタートと記載されています。
※現在のところ沿海地方のみに限られるようです。
※8月8日、アライバルビザ制度が開始されました。まずフォームより事前申請し、ウラジオストクの空港でビザを発行してもらうことになっています。
まだ先のことですが、簡易ビザ制度が導入されれば日本とウラジオストクの距離はずっと縮まることでしょう。ウラジオストクを経由すればウラジオストクを離れて旅行・観光することもできます。極東ウラジオストクだけでなくロシアが身近な観光地になりそうです。
日本の観光・旅行シーズンには間に合わない?
残念なことに仮に9月ごろに簡易ビザ制度が実地されるとなると、真夏の8月のウラジオストク観光には間に合わなくなります。日本のお盆休みは当然のことですし、5月のゴールデンウィークも過ぎ去った後になります。連休こそ海外旅行に踏み切れる人が多いですが、今年はまだ現ビザ制度で旅行シーズンを迎えることになり、本当にもったいない話です。※
とはいえ方向性としては前進しています。事前のビザ取得が簡素化されるだけでも日露あるいは日本とウラジオストクにとって良い出来事なのは確かです。
追記
※簡易ビザ制度は7月試験導入→8月ごろより本格運用が有力なようです。(2017-03-05)
簡易ビザ制度にもいくつかの注意点あり
ロシアビザ”なし(免除)”ではなく”緩和”?
ウラジオストクでビザ取得が簡素化されるといっても注意が必要です。というのも、”ビザの緩和”であって、”ビザなし”ではないということです。ビザの完全な免除ではない以上、必要措置として事前にインターネットで必要情報を申請しなければならないようです。
また、ビザ簡素化における有効期間は8日※なので、8日以上の旅行や観光を計画される場合はこれまで通り日本のロシア領事部でビザの申請から取得までを行わなければなりません。さらにウラジオストク自由港制度外の(例えばモスクワやサンクトペテルブルク)ロシア地域へ直接渡航する場合には適用されません。
追記 2018/06/14:在ウラジオストク日本国総領事館によると、ロシア専門サイト日本語では「入国日から8日間以内」との記載があるが、実際には8日未満であるとのことで、注意を促しています。
旅行関係者の安心できない点
この他、知人の旅行関係者によると、他国におけるビザ簡易制度であるアライバルビザ(現地ビザ取得制度)はオススメしていない理由がある、とのことです。というのも旅行会社からみると、ツアーなどの企画では到着後のビザ取得が万が一できない場合、ツアーそのものを中止せざるをえなくなるからだそうです。
また現地でアライバルビザを取得しようとすると、大変な行列ができ、ツアーの予定が台無しになってしまう、そのためできるだけ事前の取得を推奨しているようです。
※旅行関係者による個人的見解であり、必ずしも旅行会社すべてがこのような事情だとは限りません。
※山陰中央新報社も共同通信のニュースとして、同じような見解を伝えています。(山陰中央新報社「ロシアがビザ緩和のサイト開設 ウラジオ、慎重意見も」2017年8月1日)
アライバルビザが認められる18カ国
- アルジェリア Algeria
- バーレーン Bahrain
- ブルネイ Brunei
- インド India
- イラン Iran
- カタール Qatar
- 中華人民共和国 People’s Republic of China
- 朝鮮民主主義人民共和国 Democratic People’s Republic of Korea
- クウェート Kuwait
- モロッコ Morocco
- メキシコ Mexico
- アラブ首長国連邦 United Arab Emirates
- オマーン Oman
- サウジアラビア Saudi Arabia
- シンガポール Singapore
- チュニジア Tunisia
- トルコ Turkey
- 日本 Japan
ウラジオストク簡易ビザ制度のまとめ
以上の記事をまとめておきます。
- ビザの簡素化は日本・ロシアにとって前向き
- ウラジオストク簡易ビザ制度の実現は9月頃の見通し(追記:7月~有力に)
- 観光・旅行シーズンの連休には
間に合わない - 簡易ビザの有効期間は8日未満
- インターネットで事前申請が必要
- アライバルビザとしての注意点あり
- ウラジオストク自由港制度外では現状通りのロシアビザ取得が必要
いくつかの心配事はありますが、ビザ簡素化は前向きな方向であることは疑いようがありません。いずれ中国や韓国がそうであるようにロシアと日本の間でもビザが免除されればロシアを旅行した人、観光した人、ロシアに友達がいる人が増え、最終的に”ロシアを好きな人”も増えていくことでしょう。我々としてもそれを望んでいる次第です。
8日以上の滞在 or ウラジオストク以外へ旅行なら
補足
9月初旬の「東方経済フォーラム」参加者はビザなしで入出国できることが決定しているようです。この制度に関してはウラジオストクアライバルビザとは別の枠組みだということです。(環日本海経済研究所、2017-07-31&産経ニュース、2017-07-06)